■薬が効かない新たな「殺人菌」 国境越えた医療で拡散
2013-08-02


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  http://apital.asahi.com/article/news/2013071200003.html
     朝日新聞 > apital > ニュース > 2013/07/12
 抗菌薬の「切り札」、「カルバペネム」を分解する新たな耐性菌が、世界各地で急速に広がっているという。多種類の菌を行き来する五つの遺伝子が元凶だ。このほど日本で初報告された新型耐性遺伝子OXA48を持つ肺炎桿菌は、新耐性菌の代表であり、その現状と対策は・・・。

■国境越えた医療で拡散
 CREとは、米国で急速に広がる新型多剤耐性菌「カルバペネム耐性腸内細菌科の菌」という意味の英語の頭文字。殆ど全ての抗菌薬が効かない。
 CREが世界的に広がる背景には、外国で手術などを受ける医療ツアーの普及がある。英の感染研は、英国内のCRE患者の多くは、インドやパキスタンで手術を受けた人や、その人と接触した人だと発表している。
 医療ツアーがまだ一般的でない日本は、先進国でほぼ唯一の「CRE低汚染国」だが、海外で入院して帰国した人から見つかる例が増え始めている。昨年5月、80歳代の男性がエジプト観光中に高熱を出した。現地の病院に入院し、数日後に国立国際医療研究センター(東京都新宿区)に転院。この時の検便からCREが見つかった。

■恐ろしさ、3つの理由 CREの恐ろしさには、三つの理由がある。

 【理由1】遺伝子が五つ
 カルバペネム分解遺伝子は、少なくとも5種類見つかっていて、腸内細菌がそのどれかを持つとCREになるが、特徴が違う。種類が多いので検出が難しく、見落とし易い。
 【理由2】強力な増殖力
 CREは、驚異的な増え方をする。その秘密はリング状の細胞内物質「プラスミド」にあり、プラスミドは、自分の複製を作り他の菌に渡す。5種類の耐性遺伝子はこの物質に潜んでいて、プラスミドが複製・伝達されるたび耐性遺伝子も複製・伝達され、周囲の菌をCREに変えていき、分裂とプラスミド伝達の相乗効果で、爆発的に増殖する。
 【理由3】腸内潜伏
 CREに変化するのは、腸内に常在している平凡な大腸菌や肺炎桿菌で、腸以外の臓器に移動すると、膀胱炎や肺炎などを起こすが、普段はおとなしい。
 CRE遺伝子の一つ、OXA48を持つ肺炎桿菌を昨年に日本で初めて見つけた千葉県船橋市立医療センター微生物検査室の長野則之主任に依れば「自分の腸内細菌がCREに変わっても、健康な時なら気付かない」という。だが、いったん抗菌薬を使うと状況は一変し、腸内にいる「薬が効く」菌は死んでいき、CREが蔓延し、肺炎や敗血症を引き起こし、便を介して他人にうつる。仏では3年前にCREの院内感染が起き、5/7人が死亡した。
■封じ込めには基本の徹底
 現在、CREに効く薬はなく、新規抗菌薬の開発も滞っている。
 東邦大の舘田一博教授(感染症学)は、産官学が力を合わせて新薬開発を急がなくては、ペニシリン発見以前の暗黒時代に戻り兼ねないと危機感を示す。
 米政府は一昨年、新規抗菌薬には特許延長や優先審査など優遇するという創薬を促す新法を作った。
 新薬が登場するまでに出来ることは何か。 幸い、日本ではまだCRE汚染は広がっていない。専門家は、監視・院内感染予防策や検出技術の向上・抗菌薬の適正使用といった基本を徹底すれば、封じ込めは可能と口をそろえる。

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